そもそもこりや痛みはなぜ起きるのか
- 同じ姿勢をとり続けると筋肉が硬直する
- ストレスが肩、首、腰の痛みを増幅させる
- 現代のこりや痛みを悪化させる生活習慣はスマートフォン
- ビールが大好き
同じ姿勢をとり続けると筋肉が硬直する
人は動いていないと硬まります。適度に動いている筋肉はポンプのように血液を出し入れさせる。そうすることで血液によって筋肉には栄養や酸素が運ばれます。そして筋肉に溜まっていたリン酸や乳酸といった疲れ物質を押し流す。同じ姿勢でじっとしていると、筋肉は動きません。筋肉が動かないということは、血液を流すポンプが止まっているということです。
動かない筋肉はだんだん固くこわばってきて、血管を圧迫しはじめます。血行が悪くなると筋肉に必要な酸素や栄養が届かなくなり、疲れ物質がどんどん溜まる。疲れ物質が疲労感になり、やがてこりや痛みなどの不快感に変わるのです。人間の体は痛みを感じると反射的に緊張するようにできているため、筋肉痛(ここではこり、痛み)を感じた筋肉はいっそう緊張します。そうなるとさらに血管が圧迫されて血行が悪くなり、疲れ物質が今まで以上に溜まりやすくなるという負のスパイラルに陥ってしまう。姿勢がいい人、悪い人は関係なく同じ姿勢を続けることがよくないのです。わずか30分動かないだけで筋肉は固まりはじめるため、30分に1回は動くことが理想です。
ストレスが肩、首、腰の痛みを増幅させる
ストレスがかかる心身が緊張モードになり、筋肉は緊張しやすくなります。ストレスのせいでより筋肉が固まりやすく、より血流を妨げやすくなってしまうのです。交感神経が活発になるとこりや痛みに対する感受性が高まり、こりや痛みをより感じやすくなってしまいます。
現代のこりや痛みを悪化させる生活習慣はスマートフォン
通勤時間や休憩時間にスマホを見る姿勢のせいで、さらに肩こり、首痛を悪化させる。スマホ使用時の首の角度には要注意です。頭は体重の約10%を占め、重たいもの。60kgの人なら頭だけで6kgほどになります。この重みを支えるために、首や肩にはかなりの負担がかかっているため、首がまっすぐ立っている状態(角度0度)なら首には頭部本来の重みしかかかりませんが、首が15度傾いただけで、頭の重さはいっきに2倍になり、頭を支える首にかかる負荷が2倍になるのです。
スマホ操作で多くの時間を前傾姿勢で過ごすことで起きる問題がストレートネック。本来、緩やかなカーブを描いている首の骨がまっすぐになってしまうことで、スマホ首とも呼ばれます。正常なカーブを描いた首は、真下からしっかりと重い頭を支えているのですが、ストレートネックの首には、正常なカーブを描いた首よりもはるかに大きな負担がかかっています。そうなると骨だけでは頭の重みを支えきるのは難しいため、首や肩の筋肉をよりいっそう使わなくてはいけなくなり、その結果こりや痛みがさらに悪化してしまうのです。前屈みの姿勢は、ストレートネックを進行させ、肩こり首痛をひどくさせます。
ビールが大好き
ビールは肩こり、首こりなどこりの原因になります。キンキンに冷やしたビールは美味しいですが、体を冷やすことになり血流の流れを悪くし、こりにつながります。
肩こり首こりが体に及ぼす影響とは
- こりと痛みは集中力、判断力、やる気を低下させる
- こりと痛みは睡眠の質を下げる
- こりと痛みは慢性頭痛、目の痛みの原因にもなる
- こりは目の疲れ、痛みも引き起こす
肩、首、腰に痛みがあるというのは、患部に常に筋肉痛を感じているということ。この状態が続くと痛みを感じ続けた脳に影響が出ます。脳内で痛み物質をブロックするはずのセロトニンというホルモンの分泌が悪くなります。セロトニンが脳内で十分に分泌されなくなると、体がリラックスできなくなってしまい、緊張しっぱなしの状態(交感神経の過緊張)になります。
人の心と体は、自律神経によってうまく動くように調整されています。自律神経は交感神経と副交感神経に分かれており、交感神経は緊張モードを、副交感神経はリラックスモードを担当。この両方がうまく入れ替わりバランスをとることで、心身は健康な状態を保てるのです。こりや痛みによって脳内でセロトニンがうまく分泌されなくなると、ずっと緊張モードの交感神経がオンになりっぱなしになり、うまく集中することができなくなります。集中力が低下すると判断力も鈍ります。
こりや痛みが原因となって、自律神経のバランスが崩れ、心身の不調につながります。こりや痛みを放置していると、仕事に対する意欲が低下し、最終的には自律神経失調症やうつ病などの心の病気につながることもあります。
交感神経と副交感神経のバランスが悪くなると覚醒(昼間)と睡眠(夜間)のバランスも悪くなります。自分の眠りは質が低いのではないかと感じたら、その原因はこりや痛みかもしれません。
肩、首のこりからくる頭痛には大きく分けて2つのタイプがあります。
①筋肉の緊張による頭痛
肩や首がこるとそれにつながっている後頭部の筋肉が引っ張られます。引っ張られると後頭部にある神経を刺激して頭痛が起きます。
②自律神経がからむ頭痛
こりや痛みによって自律神経が乱れると、脳は痛みに敏感になります。急激な気圧の変化によって起きる頭痛は主にこのタイプ。炎症が原因ではないので、頭痛薬が効きづらいというやっかいな頭痛です。
こりによって後頭部の筋肉が引っ張られると、脳幹にある前庭神経が刺激され、物をみるときに焦点がぼやけたり、動くものを追視するといった症状も合併することがあります。頭痛同様、気圧の変化による自律神経の乱れによって目が痛むこともあります。肩や首がこると首から頭部にかけてつながっている神経が刺激され、この刺激が目の神経である三叉神経に伝わると目の奥が痛くなります。この症状は私もよくなりますが、目薬をさしてもほとんど効果がないのでやっかいです。
こりや痛みを和らげる対処法とは
- マッサージはもみほぐすのではなく押し流す
- 首が痛い人は背もたれのない椅子に座る
- 寝返りが打てる睡眠環境をつくる
- カルシウムとマグネシウムの不足に注意する
- 水を飲んで副交感神経を活性化させる
- スマホは時間と姿勢に注意
- マッサージ店を利用する
- 疲れたときは頑張らない
マッサージというと筋肉をもみほぐすというイメージがありますが、実はこってしまった筋肉を強くもむのは逆効果。筋肉に強い力を加えるとこり、痛みをかえって悪化させ、慢性化させます。肩こりはもんではいけません。肩や腰など不快感がある部分を押すのは気持ちいいし、一時的にラクになったと感じますが、実際には強く押された筋肉には、内出血が起き筋肉が傷ついてしまっています。強くもんだり、たたいたりすると筋肉は傷つき、回復するときにより固い筋肉に置き換わってしまうのです。指をそろえて、一定方向に患部を強くさするイメージで、筋肉に溜まった疲れ物質を筋肉の繊維にそって押し流すようにしましょう。
また、首が痛いからといって、背もたれによりかかって座っていると、背骨の正常なS字カーブが崩れてしまい、背骨とつながっている首も正しい位置を保てなくなります。その結果首の痛みが悪化する。背もたれがないと後ろにダラッとよりかかれないので、自然に骨盤を立てる坐骨座位を保ちやすくなります。
睡眠に関して特に注意が必要なのは、仕事で疲れている人、不眠傾向があって睡眠導入剤などを使っている人。お酒を飲み、酔っ払った状態で眠る習慣がある人も注意が必要です。通常であれば、寝ている間であっても同じ姿勢が続くと体は不快感を覚え、姿勢を変えるために寝返りを打ちますが、お酒や睡眠導入剤、疲れで感覚が麻痺するとその感覚が鈍くなり、寝返りを打たなくなる結果、同じ姿勢が続きます。寝返りを打つためには、寝返りの練習をしてみましょう。就寝前にベッドに入った際、何度か意識的に寝返りを打つように体を転がしてみてください。寝具はある程度固めを選びましょう。柔らかすぎると体が沈み込んで寝返りが打ちにくいです。枕は仰向けに寝たときに首の角度が15度になるのが、高すぎず低すぎず寝返りを打つのにちょうどいい高さです。
カルシウムとマグネシウムは筋肉の収縮を助ける栄養素。カルシウムとマグネシウムが足りないと筋肉の動きが悪くなってこりや痛みの原因になります。カルシウムは牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品・小魚・海藻類から、マグネシウムはナッツ類・豆腐や納豆・油揚げなどの大豆製品・ゴマ・玄米・ホウレンソウから摂ることができます。
水を飲むことで自律神経を整えてくれます。飲んだ水が胃腸に達すると、リラックスモードを担当する副交感神経が活性化され、こりや痛みの原因となる緊張をほぐすことができます。水を飲むのは、リラックスするためのもっとも簡単な方法の1つ。おすすめは朝にコップ1杯の水を飲むこと。1日の目安は2リットル、水を飲む習慣をつけましょう。
スマホの1回の使用時間を短くしてみましょう。スマホの画面を連続して見る時間を意識的に減らすようにする。スマホを見るときの姿勢を変えることで、こりと痛みを緩和できます。
こり、痛みを和らげる生活習慣として、マッサージ店を利用することはおすすめです。マッサージ店はメンタルに好影響を及ぼします。赤の他人に自分の体をマッサージしてもらうというのは、非日常的な体験でこの経験がある種のアミューズメントとなって気持ちが元気になります。マッサージをしてもらいながら施術者に声をかけてもらうことで、自分ひとりで苦しんでいた症状を他人が認めてくれる、ねぎらってくれる、そして気持ちのいいマッサージをしてくれる。これはまさに癒やしの効果です。施術者に指摘されることで、自分では気付かなかったこりに気付くきっかけにもなります。
自律神経の失調を起こしやすい人というのは、頑張りすぎる人。頑張り屋さんです。頑張り屋さんは頑張らないための努力をしてみましょう。責任感が強く、頑張りすぎてしまう人は、体調を整えることも責任と考えよう。
私の行きつけのマッサージ店のオーナーから聞いたのですが、体がカチコチになるかならないかは36歳頃を境に決まるそうです。カチコチの体のまま36歳頃を過ぎるとメンテナンスをしても効果が薄くなるとのこと。36歳までにしっかりと正しいメンテナンスを行い、カチコチな体にはならないようにしたいものですね。
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